花は、咲く場所やタイミングを選べないことがある。
結婚、出産、子育て、家族の事情。
人生の変化の中で、自分の夢を後回しにすることもある。
下山咲夢さん自身も、「失敗してはいけない」と自分を縛り、人と話すことさえ苦手だと思っていた。
けれど、その「弱み」だと思っていたものが、今では誰かの想いを引き出す力になっている。
だからこそ、咲夢さんは信じている。
「みんな可能性の原石。みんな夢を咲かせる場所がある」
人生の途中からでも、夢は何度でも咲かせられる。
そんな咲夢さんの人生と重ねながら、まずはこのテーマソングを聴いてほしい。
そして、彼女がどのように自分自身の夢を咲かせ、誰かの夢を咲かせる人になったのか。
その人生を辿っていこう。
【夢は咲く】
女性の可能性を、もう一度咲かせる
「みんな可能性の原石、みんな夢を咲かせる場所がある」と温かく語ってくれたのは下山咲夢さん。
2024年、咲夢さんは合同会社ブロッサムを立ち上げた。
「ブロッサム」という名前には、彼女自身の名前である「咲夢」とも重なる想いが込められている。
「夢が咲いていく。花が咲いていく。そんなイメージです」
花には華やかさがある一方で、しなやかさも、強さも、そして儚さもある。
その姿に重ねたのは、女性の生き方だった。
結婚、出産、子育て、夫の転勤、親の介護。
女性は、本人の意思だけではどうにもならないライフスタイルの変化によって、キャリアを中断せざるを得ないことがある。
「バリバリ仕事をしていたのに、子育てをきっかけに仕事を辞める。夫の転勤で知らない土地に行き、新しい人間関係をつくる。年齢を重ねれば、親の介護も必要になる。いろんな変化がある中でも、家族を大切にしながら、一人の女性として人生を開花させていくお手伝いがしたいんです」
ブロッサムを立ち上げた4人も、シングルマザーや会社経営者など、それぞれ異なる環境で生きてきた。
だからこそ、ひとつの「正しい生き方」を押し付けるのではなく、それぞれの選択を肯定し、可能性を広げたい。
在宅で働きたい女性と、仕事を誰かにお願いしたい経営者をつなぐ。
「パートに出るくらいなら、自宅で自分のスキルを生かして働きたい」という人と、「ちょっとした仕事をお願いしたいけれど、誰に頼めばいいかわからない」という人を結びつける。
そこには、女性のキャリアを「一度途切れたら終わり」にしたくないという願いがある。
10年間、家族のために専業主婦として過ごした女性が、再び社会に出ようとしたとき、
「昔の感覚で通用するのかな」
「自分に何ができるんだろう」
と、自信を失ってしまうこともある。
けれど、咲夢さんは言う。
「女性には、それぞれ素晴らしい才能があります。それを社会が求めている場所とマッチングして、可能性を開花させていきたいんです」
その想いは、現在の仕事にもつながっている。
「届かない想い」が、一番もったいない
今、咲夢さんの中心にあるのは、インタビューとライティングだ。
広報部を持たない企業の社長にとっての「右腕広報」のような存在として、プロモーションやブランディング、採用、出版を見据えた情報発信などに伴走している。
例えば、社員インタビュー。
社長自身が社員に聞くと、どうしても本音を引き出しにくいことがある。
だからこそ、第三者として咲夢さんが間に入る。
社員が語る会社への想い。
そして、社員自身も知らなかった社長の熱い想い。
その両方を丁寧に掘り起こし、採用記事などの形にして社会へ届けていく。
「想いがあるのに、届いていないのが一番もったいないと思うんです」
クラウドファンディングやプレスリリースの支援、経営者のノウハウをNoteに蓄積する仕事なども行っている。
競合他社と競い合うためではない。
その会社にしかない強みを見つけ、必要としている人に知ってもらう。
「生の声を集めて伝えることで、共感する仲間が集まり、選ばれる会社になる。私は、その独自化をお手伝いしたいんです」
しかし、彼女が最初から「人の話を聞く仕事」をしたかったわけではない。
むしろ、その逆だった。
「絶対にやらない」が、人生を変えた
2019年。
子どもとの時間を大切にしながら働きたいと考え、咲夢さんはライター業を始めた。
パソコン1台があればできる。
誰とも話さず、納期を守れば成立する。
そんな働き方に魅力を感じた。
当時は
「絶対にインタビューなんてやらないと思っていました(笑)」
ところが2021年、人生を変える出来事が起こる。
経営者の交流会で出会った男性経営者から、
「自分のことを言葉で表現するのがうまくできないから、インタビューしてくれないか」
と頼まれた。
咲夢さんは、すぐに断った。
「私、人と喋るのも苦手ですし、おこがましくて無理です」
それでも、その人は言った。
「あなたにやってほしいんだ」
意を決して引き受けたインタビュー。
終わった後、その経営者はとても喜んでくれた。
そして、「この人にインタビューしてもらったら、すごく引き出してくれるよ」と周囲の経営者20〜30人に紹介してくれた。
そこで咲夢さんは、思いがけないことに気づく。
「喋るのが苦手だと思っていた私の、その部分がいいと言ってくれる人がいるんだ」
自分にとっての弱みが、誰かにとっての強みになった瞬間。
それは、咲夢さん自身の人生を見つめ直すきっかけにもなった。
「失敗してはいけない」と生きてきた
彼女は幼少期から高校卒業まで、「母親の鳥籠の中にいるような感覚」で生きていたという。
兄を亡くした経験から、母親からは、
「お兄ちゃんの分まで生きなさい」
「あなたは生かされた命なんだから、二倍頑張りなさい」
と言われて育った。
習い事は週6日。
テレビはNHKだけ。
ピアノの練習では、間違えると怒られる。
テストで97点を取っても、
「なんであと3点取れなかったの?」
と言われる。
失敗すると家の中の空気が悪くなる。
だから、いつしか心の中に、
「間違えちゃいけない」
「いい子でいなければいけない」
「優等生として生きなければいけない」
という方程式ができあがっていった。
大人になった今も、「失敗が怖い」という感覚が顔を出すことがある。
人に嫌われたくない。
間違いたくない。
そんな気持ちがなくなったわけではない。
それでも最近は、「ま、それでもいっか」と思える瞬間が増えてきた。
目的地さえ見失わなければいい
その背景には、メンターからもらった一つの言葉がある。
「目的地はどこなの?」
ハワイに行く飛行機に乗ると決めていたら、途中で転んでも、誰かに文句を言われても、なんとかして飛行機に乗ろうとする。
失敗や恐怖は、目的地に向かう途中で起きる「転んだ」「風が吹いた」という出来事にすぎない。
「最終的に目的地にたどり着けばいい。そう思えるようになってから、ここで止まっている場合じゃない、目的地に行かなきゃと思えるようになりました」
この経験が、今のインタビューにも生きている。
「わかります」と言わない
人の人生を聞くとき、簡単に「わかります」とは言わない。
自分とは違う人生を歩んできた相手を、自分の物差しだけで理解したつもりにならない。
だからこそ、どんな言葉も一度そのまま受け止める。
「すごくフラットに話を聞いてくれるよね」
そう言われることが多いという。
どれだけ一般的な価値観から外れているように感じる話でも、
「そういう立場もありますよね」
と受け止める。
それは、過去の経験から自然と身についた姿勢だった。
「その人が勇気を出して打ち明けてくれたのに、『それ、やばくない?』って否定されたら、もう話したくなくなるじゃないですか」
だから、自分は「ドリームサポーター」でありたい。
相手の人生に合わせて形を変えるスライムのように、柔らかく、しなやかに。
そして、どんな想いにもフィットできる人でありたい。
人の中に、もう一度「光」が灯る瞬間
インタビューをしていると、落ち込んでいる経営者に出会うこともある。
思うように結果が出ず、「自分は何をしたかったんだろう」と迷っている人。
そんな人が、インタビューを通じて忘れていた感情を思い出す瞬間がある。
「僕が届けたかったのは、ここだったんだ」
もう一度、その人の中に小さな光が灯る。
咲夢さんが好きなのは、そんな瞬間だという。
彼女が人の人生を多面的に見ることができるようになった背景には、大学時代の先生からもらった言葉もある。
「ペットボトルも、上から見るか横から見るかで形が違うでしょ」
一つの事実も、見る角度が変われば違って見える。
幼い頃の経験や、大切な人を亡くした経験。
決して簡単には語れない過去だった。
けれど、その経験が今、人の立場を想像し、さまざまな角度から人生を見る力になっている。
言葉の奥に、その人の人生がある
小学校6年生の頃に知った緒方貞子さんの本に出合った。
1998年”世界へ出ていく若者たちへ”の本より
「国際社会で言葉はとても大切だということです。自分の意思を伝えたり、用をたす手段としてだけに考えず、相手の文化を学ぶ材料として捉えるべきです」
この言葉から感じたことは、言葉は単に意思を伝えるためだけのものではなく、相手の文化や背景を理解するためのものであり、その人へのリスペクトにもなる。
これは、多様な価値観が存在する今の社会にも通じる考え方だと語る。
そして、もう一人。
父親の姿勢も、咲夢さんの人生に深く残っている。
兄を亡くした悲しみや、強く振る舞うことで自分を守っていた母親。
父親は、そんな母親のすべてを理解した上で、まるごと受け止めていた。
家庭の雰囲気が悪い日でも、食卓では必ず、
「お母さんの料理って、やっぱり一番おいしいね」
と言っていた。
誰かを変えようとするのではなく、その人をそのまま受け止める。
その姿は、今の咲夢さんの「聴く」という仕事にもつながっている。
人生の「北極星」を見つけてほしい
では、彼女はこれから、人と出会い続ける中で、どんな未来を描いているのだろう。
答えは、はっきりしている。
「北極星に向かって、一心不乱に命を使って生きてほしい」
北極星。
それは、自分にとっての使命であり、「命の使いみち」だという。
今すぐ夢が叶わなくてもいい。
昨日より少しでも目的地に近づいていれば、少しずつ夢は咲いていく。
そして、そんな大人が増えれば、次の世代の子どもたちも、
「あんな大人になりたい」
と思えるのではないか。
「夢は、諦めなくていい。途中で夢が変わってもいい。自分の夢を口に出して、周りも応援し合える世界になったらいいなと思っています。そのためには、まず大人が変わらないといけないと思うんです」
小さな花が、景色を変える
咲夢さんが好きな花に、ブーゲンビリアがある。
一つひとつの花は小さい。
けれど、いくつもの花が集まると、鮮やかな景色になる。
人も同じなのかもしれない。
一人ひとりの人生は、一見すると小さな出来事の積み重ねに見える。
うまくいかなかったこと。
傷ついたこと。
遠回りしたこと。
失敗したこと。
その一つひとつが、いつか誰かの人生に寄り添う力になる。
すべての人生は、誰かへのギフト
咲夢さんが最後に伝えてくれたのは、そんなメッセージだった。
「一人ひとりの人生には、素晴らしいストーリーがあります。それが何よりのギフトだと思うんです。人生には無駄なことはない。ちょっとずつが積み重なって、今の自分になるんです」
かつて「お兄ちゃんの分まで生きなさい」という言葉は、彼女にとって大きなプレッシャーだった。
けれど今、その名前は違う意味を持ちはじめている。
「咲夢」。
夢が咲く。
誰かの人生の中にある、まだ本人さえ気づいていない想いを見つける。
言葉にならなかった物語を、一緒に紡ぐ。
そして、その人自身がもう一度、自分の人生を信じられるようにする。
それはまさに、彼女自身の名前が示す生き方なのかもしれない。
夢は、一度咲いたら終わりではない。
人生の途中で何度でも、違う場所から、新しい花を咲かせていけばいい。
編集後記
今回、咲夢さんのお話を聞いていて印象に残ったのは、「過去の経験を無理に美談にしない強さ」でした。
失敗が怖い。
人に嫌われたくない。
そんな感情を「もう克服しました」と片付けるのではなく、「今でも自分の中にある」と認めている。
その正直さがあるからこそ、相手の人生に対しても、簡単に答えを出さずにいられるのだと思います。
「ペットボトルも、見る角度によって形が違う」。
この言葉のように、一人の人間にも、さまざまな面があります。
成功している経営者にも、迷いや弱さがある。
強く見える人にも、誰にも言えない痛みがある。
そして、過去に「弱み」だと思っていたものが、誰かの人生を救う力になることもある。
咲夢さんの人生そのものが、「人生には無駄なことはない」という言葉を証明しているように感じました。
小さな花が集まって、やがて鮮やかな景色になるブーゲンビリアのように。
一人ひとりの人生という小さな物語が集まった先に、どんな景色が生まれるのか。
これからも、咲夢さんがたくさんの人の「まだ言葉になっていない想い」を見つけ、夢を咲かせていく姿を楽しみにしています。
【夢は咲く】
【歌詞】
夕暮れの浜辺を一人で
涙を隠したあの夜に
誰かの期待に応えようと
自分を置き去りに
空に浮かぶ雲は流れ
どこへ向かうかは気まぐれ
感じるままに生きていいかな
僕は何者で 何をやりたいの
まだまだ答えは白紙のままです
小さな痛みが君の力になる
大空へ羽ばたけ
咲ける場所はきっと
必ずあるから
どんな世界でも どんな夢も
泣いてもいい 選んだ道が
きっと花咲くから信じてよ
空を見上げて 風は優しく
キミを連れて行くよ
あの日見た故郷の空
雲の切れ間から光が
だけど、失敗恐れてばかりで
夢のない明日に胸痛んだ
「生きることだけで精一杯」
そう呟いたキミの
光る涙が星のように
未来を信じる Do For Others
今あるものに目を向けて
愛すること忘れないで
今あるものに誇りを持て
思いのままに駆け抜けろ
きっと明日は晴れるから
そのままのキミと笑顔で
咲ける場所はきっと
必ずあるから
どんな世界でも
どんな夢も
笑っていて
選んだ道が
きっと花咲くから
信じてよ
夢を持て
やれば出来るから
どんな世界でも
どんな道も
いつの日か 羽を広げて
向かい風に乗って 跳べばいい
空を見上げて 風は優しく
キミを連れてくよ
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